第3弾
手元供養か永代供養か、家族で決める前の話し合い
仏壇の前ではなく、ソファで話した
見積もりがそろった秋、坂井進さん(71歳)夫妻は札幌の長女の家に集まりました。テーブルの上には、供養のパンフレットが何冊も。永代供養、樹木葬、納骨堂、手元供養。どれも正解に見えて、どれも決めきれない。
進さんが最初に口にしたのは、自宅供養でした。根室まで行けない日でも、リビングで手を合わせたい。カヨさんの認知症が進んでも、毎日同じ場所でご先祖の名前を呼べる方が、二人には現実的だと。散策が好きな二人にとって、近隣の野山へ出かけた帰り道、仏壇の前で「ただいま」と言える暮らしは、小さな安心になったそうです。
経験者の言葉が、背中を押した
手元供養を選んだ六十代の男性は、こう言います。「お墓が遠くて行けない冬、仏壇の横で『おかえり』と声をかけたら、妻が泣いてくれた。それが、うちのお墓参りになった。」
調べてみると、手元供養は数万円から始められる一方、自分たちの死後を誰が引き継ぐかは家族で決める必要があります。永代供養は施設が守ってくれる。費用はかかっても、後継者の負担は小さい。
長男は東京から画面越しに参加しました。「僕たちが亡くなったあと、孫がどうするかまで見えない。だから、お父さんお母さんが生きている間に、分かる範囲で決めてほしい。」厳しいようで、進さんには救いの言葉でした。長女は、手元供養だけにすると自分がすべて引き継ぐ気がして怖い、と正直に打ち明けた。そこから話が本音になったそうです。
進さん夫妻が選んだ折衷
話し合いの結果、夫妻はこう決めました。ご先祖の遺骨は、一部を手元供養のミニ骨壺に納め、残りは札幌近郊の合祀型永代供養墓へ。お盆には永代供養の場所へ行き、日常は自宅で手を合わせる。分骨という形です。
カヨさんはミニ骨壺を両手で持ち、「これなら迷子にならない」と小さく笑ったそうです。長女は、その笑顔を見て初めて納得したと言います。永代供養の場所は、長女が車で送迎できる距離の霊園にした。お盆とお彼岸は、そこへ。それ以外の日は、自宅の棚で手を合わせる。
書類にサインする前に、進さんは長男・長女と簡単なメモを残しました。供養の形、費用の分担、自分たちが判断できなくなったときの連絡先。派手な遺言書ではない。でも、墓じまいを考える時期に必要なのは、きれいな結論より、家族が同じページに立つことだったのかもしれません。焦らず、でも冬が来る前に、動き出す。進さんはそう決めています。
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